7.西沢隆二一派――いまは責任のがれの沈黙


事件いらい表面に出ぬ西沢

 「鉄砲から政権が生まれる」とことあるごとに暴力集団をケシかけておきながら、その帰結としての銃撃・虐殺事件が国民のごうごうたる非難にさらされると「あれは毛思想とは無縁」と口をぬぐう福田正義一派――。なんとも人を食った話ですが、同じ反党盲従分子、西沢隆二(ぬやま・ひろし)をリーダーとする「毛沢東思想研究会」グループの場合は、もっぱら沈黙とほおかぶりをきめこんでいます。「西沢は事件いらい、健康上の理由などをあげて表面に出たがらないし、他のメンバーも事件にふれるのをことさらさけている」――西沢一派の事情に通じた人たちが伝える近況です。

 北京の態度表明を待っているのか。それともうかつに口もきけないほど、なにかのっぴきならないいわくがあるのか。

羽田事件で早くも暴力賛美

 第一次羽田暴力事件(一九六七年十一月十二日)といえば、民主勢力の挑発者トロツキスト集団がはじめて大がかりに角材、こん棒を持って登場した事件。いわばこんどの銃撃・虐殺事件の "さきがけ "です。西沢隆二はこのとき、いちはやく暴力集団のこの妄動を賛美し、自分たちの機関紙でこうおだてあげたものでした。

 「若い労働者や学生の隊伍の中に人民解放軍の旗のなぴく日も、決して遠いことではない……。その日、若者たちは "鉄砲から政権が生まれる "という毛沢東同志の言葉の正しさを身ぶるいをもって思い起こすだろう」(「人民新聞」一九六七年十一月二十六日号)



 永田洋子や坂口弘ら毛沢東思想に傾斜するトロッキストを含む各派集団が、西沢らの扇動に "身ぶるい "し、その後、角材から火炎ビン、手製爆弾……と、 "武器 "をエスカレートさせていったのはよく知られている通り。西沢一派の機関紙・誌はそれに輸をかけて「敵に反対されることは悪いことではなくよいことだ」「すばらしい」を連発しました。

 「中核派」集団が新宿駅頭で老人や婦女子までも巻きぞえにした火炎ビン、投石騒ぎを起こせば「学生、市民連帯の街頭火炎ビン闘争」「人民ゲリラが大活躍」とたたえ、「社学同ML派」が神田の路上で自動車を焼打ちにすれば「人民大衆と結びついた街頭バリケード闘争」と持ち上げる。 "功 "をあせった「革マル」がアメリカ大使館にしのびこみ、売名宣伝用のタレ幕を下げれば「愛国学生、米大使館に突入」とほめあげるといったあんばい。

 米原子力空母「エンタープライズ」佐世保「寄港」に反対する世論が全国的に盛り上がった一九六八年には、「共産同」「社学同」「日中青学共闘」メンバーを集めて座談会を開き、「非合法の軍事組織、暴力組織の必要牲」を強調、今日の「連合赤軍」を示唆するような「組織のセクト性を克服した共同行動」を公然とそそのかしたものでした(『毛沢東思想研究』一九六八年三月号)。

強かった「ML派」との関係

 西沢一派は、各派暴力集団の中でもとりわけ永田洋子をはじめとした「京浜安保共闘」グループの母体となった「社学同ML派」とただならぬ関係にありました。それをはっきり証明したのが、一九六九年三月十五日、日中友好脱走派(会長・黒田寿男)内で発生した日中友好貿易の利益配分をめぐる福田一派へのなぐり込み騒ぎです。

 この日、永田礼司、岡村学ら札付きの暴力分子に率いられたML派四十人は、西沢一派の両田ハル子、白西紳一郎らと徒党を組んで、「日中貿易のあがりのわけ前を東大や日大でたたかうわれわれにもっとまわせ」と、東京・神田の脱走派本部で福田一派の主導権のもとに開かれていた「常任理事会」の会場におしかけました。

 永田らは「理事」の一人ひとりを "総括 "にかけ、なぐるけるの乱暴のかぎり。歯を折られてうずくまるもの、いすごとあお向けにひっくり返されて気を失い、水をかけられるもの、茶わんの破片で後頭部をぶち割られるもの、逆さづりにされるもの……。「ぶち殺せ!」「おい、こいつまだ口からアワをふいていないから大丈夫だ。もう少し痛めつけてやれ!」の怒号。悲鳴。脱走派本部内は修羅場と化しました。

 "総括 "は翌日にまたがるえんえん十八時間も続き、その間、「理事」たちはろくに便所へも行くことを許されず監禁状態。結局、西沢一派やML派の "要求 "をのんで、各友好商社から総額五百万円を集め、ML派の "軍資金 "としてきょ出することを誓約しました。

暴力集団の資金集めも援助

 西沢一派はこのようにトロッキスト暴力集団の資金集めにも積極的な役割を果たしていたのです。西沢自身も毛沢東への盲従ぶりがみとめられ「五同産業」という日中貿易商社を開業しています。「人民日報」や北京放送の片言隻句を金科玉条とする西沢の盲信度からすれば、かれもまたML派ほか暴力集団の有力なスポンサーとなっていたであろうことは、想像にかたくありません。そうでなければ西沢は、口先だけの日中利権ブローカーにすぎないことになるわけです。

 紙上での教唆、扇動にとどまらず、資金をめぐってもぬきさしならぬつながりにあったトロツキスト集団と西沢一派との関係――。

 この一派のこんどの銃撃・リンチ虐殺事件の反応が「沈黙」であるのは、至極うなずけるというもの。だが、 "共犯者 "としての責任はのがれられるものではありません。


もくじ 10 11 12 13 14

inserted by FC2 system