12.資金のナゾ――カギは中国貿易商社


"M作戦 "だけでは大「赤字」

 「あんなたくさんのお金どこから手にいれたんでしょう。生活がやっとの私たちには思いもよらない大金です」(南軽井沢の主婦伊藤まさ子さん)――連合赤軍一味が逮捕されたとき所持していた金は、一般庶民がびっくりするほどぱく大なものでした。

 警察につかまったとき、森恒夫が三百四十三万円、永田洋子が四十六万円をポケットに無造作にねじこんでいました。「あさま山荘」に逃げこんだ坂口弘ら五人が七十五万円……。現金だけで合計六百万円をうわまわりました。

 一味の資金調達法の一つは一連の金融機関を襲う「M作戦」。「我われは大いに犯罪を犯すべきである」「銀行から強制収奪することが人民に損害を与えるものでないことは明らか」と呼号して昨年二月から「武装蜂起」の前段階として干葉県下の三つの郵便局、仙台郊外の振興相互銀行黒松支店、横浜の横浜銀行相武台支店、米子の松江銀行米子支店など金融機関をあいついでおそいました。あげくのはては横浜で小学校職員の給料三百二十万円を自昼ひったくり、東京では夜陰に乗じて女性のハンドバッグをひったくる辻強盗までやってきました。

 ところでこの一連の「M作戦」で一味が入手した金は千三百万円余。米子事件はすぐつかまり、六百万円が回収されたので手もとに残ったのは七百万円あまり。そして一味が逮捕されたとき所持していた "現ナマ "は六百万円。使った金は百万円という勘定です。

 しかしこれで一年間の逃走生活がまかなえるはずはありません。「赤軍派」、「京浜安保共闘」の連合の動き(昨年一月)からこの一年数力月の間、真岡の銃砲店襲撃事件だけみても長野―新潟―秋田―札幌―東京―群馬と、かれらは逃げまわっています。そして丹沢アジトにはじまり、群馬上毛山中にいたる山岳アジト建設費、二十力所をこえる都市アジト設営費、潜行のための旅費、生活費……。この間、一味の動かした金は一千万円をこえると推計されています。かれらの資金源が「M作戦」だけだとすると、大「赤字」です。しかし一味は、金に不自由していた様子はありません。

 かれらの資金源には、どうしても「M作戦」以外のルートも考えられてきます。

 第一に警察庁富田警備局長も認めている警察からの泳がせ資金、第二に一部の学者、文化人からのカンパ。第三に一味が "兵士のための肉体訓練 "と称する土木工事や港湾荷役などでえた賃金からの上納金。第四に大口資金カンパ。

青砥らがすでに一部自供

 「M作戦」だけでは赤字。第一から第三までは、それぞれ相当額になるにしても一千万円には到底ならないでしょう。間題なのはなぞにつつまれた第四の大口資金カンパ。

 青砥幹夫らがそのナゾの一部を自供しはじめています。「京浜安保共闘」の永田らが、同じグループの "女闘士 "が都内の一部の日中貿易商社の社長とねんごろになったことをネタにその社長をおどしてひき出してきたといいます。前沢虎義も昨年から永田を中心にこうした貿易商社から多額な資金をえていたことを自供しています。

 日中貿易筋に明るいN氏はこういいます。

 「おどかしたの、おどかされたのという仲じゃあありませんよ。毛沢東に土下座して大もうけしている盲従商社と毛沢東思想の旗をかかげつっぱしる『連合赤軍』は同じ穴のムジナですからね」

 毛沢東盲従の西沢隆二らの五同産業、長谷川敏三の呉山貿易、津々良渉の五洋貿易、大武旭の大竹貿易、高橋庄五郎の高庄など永田らが足しげくかよいそうな盲従商社はいくらでもあるとN氏は指摘します。

 こうした盲従商社が支配権を握っているのが国際貿易促進協会。この事務局は「京浜安保共闘」のメンバーがそうであるように、元トロッキスト集団「ML派」くずれが牛耳り、川島豪、永田洋子ら「京浜安保共闘」の幹部とひとかたならぬ関係にあったといわれます。例の「あさま山荘針撃戦」がはじまった二月十九日、東京の国電御茶ノ水、池袋駅頭で背広を着こんだ会社員風の男が「連合赤軍を支援しよう」などといいながらカンパ活動をしていました。この背広男が盲従商社員。「連合赤軍」一味の潤沢な資金の秘密をとくカギはここにありそうです。

財界からも流れた資金

 毛沢東盲従商社はかねてから暴力集団の資金源でした。六九年三月に日中脱走派が大分裂したきっかけのいわゆる三・一五テロ事件も、主流派の黒田寿男らが「ML派」など暴力集団へのカンパをしぶり友好商社が「四十億円の配慮物資を中国からもらって儲けている」(脱走派の機関紙「日本と中国」)のに "わけまえ "をあまりまわさなかったことが原因。脱走派は同年の「東大闘争」、前年の羽田事件でつかまった暴力集団のために「救援センター」をつくり、商社に「犠牲者にたいする救援カンパのご協力のお願い」なる「回状」をまわし、五百万円をあつめて「ML派」などトロツキスト集団に "献金 "しました。

 一味の資金については警察ではほぼ解明しているようですが、銀行強盗、ぴったくりなどはっきりしたもののほか、なぜか大口資金を提供していたとみられる盲従商社との関係には口をつぐんだまま。「なんとか中国と接触したいとアヒルの足をバタバタしている自民党政府、中国に乗りこもうとしている大企業にとって、うまくない材料になるからだ」(国貿促消息筋)という見方が有力です。

 さらに解明されなければならないのは、一味と財界との関係。二年前の「よど」号ハィジャック事件の資金として百万円あまりを関西財界人が出していた事実もあり、今回、相当の資金が流れていたことも想像にかたくありません。


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