10.「京浜安保共闘」――雑多な狂信分子が野合


武装闘争けしかけにこたえ

 「連合赤軍」一味があさま山荘でうちまくった銃器――ライフルー丁、猟銃四丁、ピストルー丁。かれらはこれをどこから手に入れたのでしょう。

 ライフルは「赤軍派」の野津加寿恵が兄の家から盗み出し、ピストルは「京浜安保共闘」のシンパ中野文雄が昨年フィリピンから密輸入して同派にまわしたもの。では四丁の猟銃は――。うち三丁はよく知られているように「人民遊撃隊」を自称する「京浜安保共闘」の中島衡平、尾崎康夫らが昨年二月、栃木県真岡市の塚田銃砲店に押し入り、店主夫婦をしぱりあげて強奪したものです。同派はこれよりさき、七○年十二月には、渡辺正則、柴野春彦らが警官のピストルを奪おうとして東京・板橋の上赤塚派出所を襲撃しています。

 かれらは、これらの強盗行為を「鉄砲から政権が生まれる」「人民の軍隊がなけれぱ人民のすべてはない」という「人民戦争万能論」にもとづく「建軍武装闘争」といい、「毛主席の呼ぴかけに応えたもの」で「日本人民がはじめてその手に鉄砲を握りしめた偉大な闘い」とうそぶいています。

 「毛主席のよびかけ」とは、毛沢東が一九七○年五月二十日に発表した声明で「小国の人民も、武器をとって敢然としてたちあがり武装闘争を堅持しさえすれぱ米帝国主義とその手先を必ず打ち破ることができる」と武装闘争をけしかけたことをいいます。

 派出所襲撃事件の犯人、渡辺はさる三月十八日の公判で「毛沢東思想は現代マルクス・レーニン思想の最高峰である」とのベ、相変わらずの毛沢東盲従ぶりをしめしていました。

「連合赤軍」も元のメンバー

 この毛沢東盲従集団・「京浜安保共闘」が世に知られたのは、一九六九年九月の愛知外相の訪ソ訪米のとき。羽田空港の滑走路に侵入、火炎ビンを投げ五人がつかまりました。「反米愛国」「毛沢東思想万歳」と書いた赤旗をもっていました。

 その結成は、かれらの発行した文書によろと同年八月としています。上部団体として「日本共産党(革命左派)神奈川県委員会」なるものをいただくその組織は、京浜地城の「学生戦闘団」(東京水産大、横浜国大、神奈川大、関東学院大など)、「京浜労働者反戦団」、「婦人解放同盟」、「反戦平和婦人の会」などによって構成されています。しかし、実体はシンパを含め約百五十人の同体異名の単一組織。

 その源流をたどると――。

 一九六七年春、トロッキストML派を脱退した横浜国大の新井功(殺された加藤能敬らを組織し「中京安保共間」をつくった男)、同大と交流のあった東京水産大の川島豪、坂口弘らのグループがYF(「反帝平和青年戦線」)なる組織を結成しました。毛沢東盲従の独自の綱領、規約をもつこの組織は、おりからの紅衛兵運動の最盛期のなかで、中核派(横浜国大)やブンド系の共産主義学生戦線(東水大)にあきたらない雑多な反共暴力分子をある程度結集するのに成功しました。

 これが、「京浜安保共闘」、つまり「(革命左派)神奈川県委員会」の前身であり母体です。

 今回の「連合赤軍」事件の関係者のうち、吉野雅邦(横浜国大)、寺岡恒一(同、死亡)、金子みちよ・(同、死亡)、大槻節子(周、死亡)、杉崎ミサ子(同)、坂口弘(東京水産大)らはもちろん、渡辺正則(横浜国大、交番襲撃)、柴野春彦(同、同、死亡)、雪野健作(同、猟銃強奪)、中島衡平(東京水産大、同)ら京浜安保共闘のほとんどがYFのメンバーでした。YFは一九六九年春には「(革命左派」神奈川県委」を結成、同時に「学生戦闘団」を名乗り学園から姿を消し、坂口ら一部は職場にはいって「労働者戦闘団」を組織、女性活動家は「婦人解放同盟」をつくります。

 もっとも狂信的な毛沢東盲従集団もそのもとをたぐれば、「赤軍派」と固じブンド系のトロツキストML派というわけです。

毛語録の片言隻句を真理に

 他派のトロツキストから「毛・林派」とさげすまれたML派脱退組とはいえ、トロツキストがなぜ毛沢東盲従集団に変身したのか。

 一九六七年といえば、中国で紅衛兵が大さわぎをしていた時期。安保闘争後、国民から見離され、四分五裂して意気消沈していたトロツキストは、「造反有理」のスローガンをかかげ、手あたりしだいの乱暴を働いた紅衛兵運動に触発され、その一部は急速に毛沢東盲従に変わっていったのです。

 東京水産大、横浜国大などのML派は、善隣学生会館事件(一九六七年二〜三月)では、日中脱走派造反団を名乗り、望月登、永田礼司ら神奈川の反党盲従分子たちとともに日中友好協会本部襲撃に参加しています。

 さらに、毛沢東一派が日本の草命運動、民主運動に押しつけてきた「毛沢東思想」の絶対化は、毛沢東の片言隻句を無条件の真理とする単純なもの。その反日本共産党の立場とあいまって、トロツキスト学生の単純な頭脳にもっとも受け入れやすいものだったといえます。


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