1.「連合赤軍のナゾ」――解明のカギは盲従の究明


警察当局の小細工と演出

 「あさま山荘」事件では、警察庁はベテランの広報担当者を現地に派遣しました。「突撃」の前日には、突撃計画のすべてを報道陣に発表しました。死体発掘では、前夜一度掘り出した死体をもう一度埋めて、翌朝記者席までこしらえ、発掘状況をカラー写真で撮影させました。

 そのごの逮捕者の自供、自首した山本保子(二八)につづいて、保子のこどもさがし、中村愛子(二二)の自首、前沢虎義(二四)や岩田平治(二一)の自首など、逃亡者の自首の発表もタイムリーにおこなわれ、死体発掘ニュースのあい間、連日紙面から消えることなく続いています。だが、だれにも不審な、これら自首した連中の逃亡後の足どりになるとまったく不明。ただ残虐なリンチの実態がくりかえし流されるだけ。かれら凶悪犯を一ヵ月近くかくまってきた黒幕の正体はなにひとつ明らかにされていません。

 もちろん犯人らは留置場のなかにいるわけですから、捜査当局以外は、かれらの自供がどの程度にすすんでいるかは、知ることは不可能です。テレビも新聞も週刊誌も、捜査当局の発表にたよるほかありません。ここに当局の情報コントロールが働く余地が生まれます。ベテランの広報担当者から流される発表、情報にはもちろんつじつまのあうように小細工がおこなわれ、演出されています。だが小細工はかならず破たんするものです。

森、永田みのがしの不思議

 「連合赤軍」の "最高指揮者 "森恒夫(二七)と永田洋子(二七)の逮捕当時、群馬県警は、かれらは悪臭にみちて「永田をつかまえた逮捕の瞬間は夢中だった捜査員も一息いれると思わず両わきからかかえていた腕をはなしそうになった」(「朝日新聞」二月十九日付)「身なりはこじきみたい……。くさくて、くさくて。しばらく悪臭が車内に残るので迷惑した」(「毎日新聞」同日付)と発表しています。ところが、三月二十三日付毎日新聞では、群馬県警の発表として「森、永田は二月四日から上京し、十六日に松井田署員の職務質問を受け、東京渋谷のテレビタレントT夫婦と名乗ったので、同署員が警視庁に間合わせ、T夫妻の実在を確認したので釈放した。森と永田が逮捕された翌日、三百八十九万円の大金を所持していたのは、東京のアジトに預けてあった資金をとりに行ったのではないか」というのです。

 各駅頭に人相書がまわり「チビで色黒、出っ歯でギョロ目」と特徴の多い永田をつれた森が十日間も東京方面のアジトにいたのを逮捕できないほど日本の警察はのんびりしていたのでしょうか。

 また十六日に森、永田らを張込んでいた刑事が、職務質問をしていながら異様な臭気を放っていたはずの二人を、東京からきたテレビタレント夫妻と信じ、問合わせをうけた警視庁も疑わなかったというのですから、これもおかしな話です。

 虐殺された加籐能敬(二二)は中村愛子といっしょに昨年十一月二十一日、府中市是政の川島陽子(二七)の爆弾アジトで、爆発物不法所持の現行犯で逮捕された経歴をもっていますが、どういうわけかそろってすぐ保釈されました。そして山岳アジトに参加、加藤は "小嶋和子(二二)と肉体関係をもった "という理由で、実弟二人も加わってなぶり殺しにあったのです。

 このほか転々とアジトをかえて真岡で奪った猟銃をもち歩き、爆弾製造や訓練にはげんできたかれらの資金源もナゾの一つ。赤軍派が銀行強盗で奪った金が一千万円、約五百万円は逮捕時に押収されていますから、五百万円で一年近いあれだけ多くの連中の逃避行ができるはずはありません。

発表されない毛盲従のこと

 だが最大のナゾは、いま洪水のように流されている報道の渦のなかで、「連合赤軍」の背後に浮かんでは消える毛沢東盲従のことがほとんど発表されていないこと。

 かれらのアジトから大量に中国製のカンヅメや毛沢東選集、毛沢東語録が発見されたというニュースは、新聞の片すみに小さく報道されただけで、かれらがそれをどこからどういう経路で入手し、運びこんだか、いろんな疑惑はいっさい解明されていません。

 なにかといえぱ事件の「思想的背景」にカを入れる治安当局が、中国の「文化大革命」で紅衛兵がおこなった人民裁判さながらの蛮行を目の前にしながら、毛沢東語録にはまったく関心をしめさないのは、奇怪しごくといわなければなりません。


もくじ 10 11 12 13 14

inserted by FC2 system