4.紅衛兵と瓜二つ―― "革命 "の名で殺人を合理化


「連合赤軍」がまねたもの……

 「(連合)赤軍派の考え方は、中国共産党の毛沢東主席の考え方と同じだという人がいるが、か弱い女性を人質に取ったり、仲間を虫ケラのように殺したり――そんなことを毛主席がしただろうか」

 これは十七日付毎日新聞にのった投書の一つ。「毛沢東思想」をかかげた「連合赤軍」一味の蛮行は大きな反響をよび、各新聞には投書が殺到。そのほとんどが怒りをぶちまけたものですが、なかにはかつての毛沢東と中国共産党が指導して中国人民がかちとった中国革命への記億から、こうした疑問をいだく人もいるようです。

 しかし、数年前の中国の「文化大革命」で毛沢東の指揮のもとに紅衛兵がおこなったあの残虐な蛮行、狂信的な大殺りくを思いおこせば、「連合赤軍」一味がなにをマネたかは一目りょう然です。

 紅衛兵が「文化大革命」のチャンピオンとして出現したのは一九六六年。「全国から孫悟空を輩出させ、天宮に攻め入る」ことをよびかけた毛沢東の大号令で、たちまち全中国に、学業を放棄し、武器をとって紅衛兵組織に参加した青少年がみちあふれました。

 当時、中国全土で、「あさま山荘」銃撃戦に加わった加藤兄弟のような少年たちが、「毛沢東思想の小勇将」とおだてられ、毛沢東語録をふりかざして、乱暴のかぎりをつくしました。それまでの行政機関の指導者や共産党組織の幹部のほとんどが「妖怪変化」の「実権派」とされ、毛沢東思想に忠実でないという紅衛兵の一方的判断だけで、つるしあげ、リンチの対象にされました。

幹部を人民裁判で公開処刑

 毛沢東は「文化大革命」の名のもとで紅衛兵を使って、中国共産党を破壊し、中国の党と政府に毛沢東の専制支配を確立することをねらったのです。

 一九六七年一月の日本の各新聞は北京市長彭真(共産党中央委員会政治局員)、党中央宣伝部長陸定一、人民解放軍参謀総長羅瑞卿、人民日報編集長・新華社社長呉冷西ら二十人が人民裁判という名の公開処刑でさらしものにされた写真を大きく掲載しました。数十年間、毛沢東とともに中国共産党員として革命のためにつくし、建国後十数年を党や国家の要職にあった指導者が、孫のような少年紅衛兵に、えり首をつかまれ、うしろ手にされて、いわゆる "ジェット機式 "にひきたてられ、なぷりものにされた写真は、総選挙のさなかに、自民党の反共宣伝に最大限に利用されました。このリンチのあまりのひどさに羅瑞卿は三度も自殺をはかったほどです。

 また日本でも紹介され愛読された小説『紅岩』の作家、羅広斌も紅衛兵に虐殺されました。紅衛兵たちは『紅岩』を修正主義小説と称し、作者を「アメリカと蒋介石のスパイ」にしたてあげたのです。党の最高幹部や著名な文化人にたいしてさえ、こうした中世紀的残虐なリンチがくりかえされたのですから、一般人民のあいだではもっと激しいリンチや武闘がくりかえされ、罪もない人びとが多数生命をおとしました。

 党内で民主的討議を封殺し、自分に反対するものに肉体的暴力を加えたり、党内で一人の人物を神格化したりするようなことは、科学的社会主義とはまったく縁がありません。

 毛沢東一派はそれだけでなく、自分のいいなりにならない日本共産党を破壊しようと、乱暴な攻撃、干渉をつづけてきました。

"毛理論 "の行きつくところ

 こうした毛沢東一派の主張や行動にたいして、日本共産党は、科学的社会主義の立場に反する極「左」日和見主義路線であると、一貫して批判してきました。

 当時の紅衛兵の残虐行為がどんなにひどかったか、そのころ武漢市に張り出された紅衛兵の「大字報」(壁新聞)が生なましく伝えています。

 「湖北省の全県市で三百余の革命大衆組織が "反革命 "とされる。逮捕者一万余人。暗殺三百余人」(一九六七年二月から四月中句まで)

 「武漢市で発生した武闘百二十余回。死傷ゆくえ不明七百余人……」(同四月二十九日から六月三日まで)

 「造反有理(むほんには道理がある)」「革命とは暴力である」「一がわかれて二になる」などという「毛理論」の行きついたところは紅衛兵同士の武闘、殺し合いでした。しかもそれが「文化大革命」の名で合理化されたのです。

 仲間をつぎつぎに虐殺した人民裁判の指揮者森恒夫は前橋地裁に出した「上申書」のなかで「敵権力に対する銃を軸とした殲滅戦以前に、われわれ自身に死にもの狂いの闘争を要求していった……」となんの反省もしめさず殺人を "革命 "の名で合理化しています。

 この「上申書」は「毛沢東思想」に心酔し、「文化大革命」で "活躍 "した紅衛兵にまねた毛沢東盲従、暴力集団の許しがたい体質の証明書となっています。「連合赤軍」は毛沢東思想の産物といえないなどという見解は、事実にも反した正しくないものです。


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