中国にはインフレがない


 中華人民共和国は、成立いらい、国民経済がカづよい発展をとげ、国内市場が繁栄し、金融、通貨は長期にわたって安定を保っている。新中国が成立して数年間で、国民党反動政府がもたらしたインフレと物価の暴騰は完全にあとを絶った。

 解放前、国民党反動政府が、紙幣を濫発したため、貨幣価値が下がり、物価は暴騰した。一九三七年から全国が解放される直前までの十二年間に、国民党の紙幣発行高は一四○○余億倍ふえ、物価は八万五○○○億倍にはね上がった。当時の官僚ブルジョア階級は、インフレを利用して、人民から富をまきあげ、暴利をむさぼった。そのため、搾取される広はんな勤労者は大きな被害をこうむった。

 新中国成立ご、社会主義制度の確立にともない、通貨は勤労者の血と汗を搾取する手段から広はんな勤労者を幸福にする道具となった。中国の人民幣は国家の社会主義革命と社会主義建設をすすめ、都市と農村の交流を拡大し、労農同盟を強固にし、人民の生活をしだいに改善するのに奉仕するものである。そうした人民幣の性質は貨幣価値の安定を決定づける。

 全国が解放されると、国家はただちに一連の措置をこうじて、旧い通貨を人民幣にきりかえ、外貨の流通を禁じ、金融市場の投機活動をきびしく取り締った。その結果、旧中国の長期にわたるインフレによってのこされた害毒が徹底的に一掃され、独立自主の、統一された、安定した社会主義の通貨制度と財政・金融体系がうちたてられた。「独立自主、自力更生、刻苦奮闘、勤倹建国」という毛主席の方針にみちびかれ、数次にわたる五カ年計面の建設によって、中国社会主義経済の基礎はたえず強化され、財政・金融は日ましに強固になり、それが人民幣安定のゆるぎない基礎をもたらしたのである。

 国家が通貨の安定をたもつ政策をとっているため、人民幣の価値は長期にわたってもとの水準をたもち、変動を生じたことがない。

 資本主義諸国の通貨がつねに動揺しているのにくらべて、人民幣の価値は一貫じて安定をたもっている。外国との経済往来の中で平等互恵の原則をつらぬくため、一九六八年から、人民幣で価格を計算し、決済をしている。いま、中国との貿易その他の経済往来で元建元決済をしている国、地域がたえずぷえている。

 この二十五年間に、中国の農業はたえず発展し、穀物の収穫高は解放当初の一億一○○○万トンから二億五○○○万トン以上に増えた。綿花、油料作物、糖料、麻類、葉タバコ、茶などの工芸作物の収穫高も大幅な伸びをしめした。そうした農業の全面的な発展を基礎として、軽工業と重工業はともにめざましい発展をとげている。中国人民の衣食に供せられる各種の商品は大いに増えた。いま、市場に供給される肉類、魚、家きん、野菜、くだものおよび布地、紙類、砂糖、タバコ、薬品、自転車、ミシンなどの工業製品は、中華人民共和国成立当初にくらべて数倍ないし十数倍にふえている。また、商業部門のストックも大いにぷえ、特に食糧、綿花などの主な商品のストックは大幅の増加をしめしている。こうしたことは、人民幣安定のゆるぎない物質的基礎である。

 中国は、生産手段の社会主義的公有制を実施しているから、ほとんどの商品は国家が掌握している。国営企業の製品は国家の所有に属し、農村の人民公社、生産大隊の農産物・副業製品は自家用分を除き、残りを国家が合理的な価格で統一的に買いつける。人民幣は、国家が計画的に発行しており、十分な商品を裏付けとしている。これが、流通する通貨の量を商品の供給量とマッチさせ、人民幣の安定をたもたせているのである。

 中国では国家が商品の小売価格を決定する。生産と建設の進行、人民生活の安定を保障するため、国家はつねに安定した価格で商品を市場に投入する。この二十数年間、食糧、綿布、食塩、石炭などの生活必需品の価格は一貫じて安定をたもっている。しかも薬品、文化教育用品などのように、価格が大幅に引き下げられた商品もある。旧中国がのこした工業製品の価格と農産物の価格とのシェーレを減らすため、国家はまたしばしば農産物および副業製品の買い付け価格を計面的にひきあげ、化学肥料、農薬、ディーゼル油など農業生産手段の小売価格をひき下げた。そのため、農民は現金収入がふえただけでなく、同額の貨幣によってより多くの工業製品を買えるようになった。

 社会主義建設で、中国は「経済を発展させ、供給を保障する」という毛主席の方針をつねに実行し、財政収支のバランスと通貨・金融の安定をまもっている。紙幣の発行は、一貫して、生産の発展と商品の流通を拡大するに必要な範囲内にとどめ、紙幣の発行によって財政収入をふやすことは許されない。こうしてインフレは根絶されたのである。

 中国の財政が収支のバランスをたもち、赤字をださないのは、社会主義計画経済のもつ役割を発揮させているからである。中国の財政収入は主として社会主義企業の蓄積であり、財政支出は主として社会主義経済の発展にあてられる。財政収入をふやす基本的な道としては、以前から広はんな人民のたゆまない労働と限りない創造力に依拠して、生産の発展、資金の蓄積に努力する方法がとられている。建設資金の配分と使用については、一貫して勤倹建国の方針がとられ、節約につとめ、浪費に反対し、すくない金でより多くの仕事をすることにしている。この二十五年間に、工農業のたえまない発展を基礎にして、中国の財政収入はひじょうに増えた。そのため、大規模な経済建設にたいする資金の供給が保証されたばかりでなく、国家財政のバランスもたもたれた。自然災害の発生などの特別な状況にさいしては、増産・節約と国家のもつ予備金にたより、計画的におぎなうことによって、収支のバランスをたもち、その解決策として紙幣を濫発する方法は絶対にとらない。

 人民幣が長期にわたって安定じているいまひとつの重要な原因は、国家が通貨の発行を集中的、統一的に管理しているからである。それと同時に、通貨の供給と還流も計画的に調整される。そのため、通貨は計画的に投入・回収されて、正常な流通がたもたれるのである。

 毎年中国がおこなう現金供給の八○パーセント以上は賃金の支払い、農産物・副業製品などの買い付けに当てられている。この部分の通貨の供給と還流は、国家が計画的に按配して、そのバランスをとる。毎年採用する労働者・職員の数、それに支払う賃金、供給する商品の量は、すべて国家の計画にもとづく。賃金総額を決定するさい、国家は、財政・経済上可能な条件をあらかじめ考慮し、それに応じて商品の供給を按配する。そうすることによって、賃金として供給された通貨を、国営の商業部門による商品販売をつうじて回収することができるのである。それと同様なことが、農産物・副業製品を買い上げ、農業支援に国家が支出する金額、銀行の農業にたいする貸付金についてもいえる。このばあいには、農村で消費する日用品と農業生産手段の供給量をあらかじめ適当に按配することによって、供給された通貨がとどこおりなく還収されるのである。

 人民幣は中国における唯一の通貨である。中国で通貨の発行と管理を統一的におこなうのは国立銀行であって、いかなる地域、いかなる単位も通貨を発行する権限がない。通貨の流通を計画的に管理するのを容易にするため、すべての企業、事業体、政府機関、団体、軍隊のあいだでの取り引きは、規定された金額をこえるばあい、すべて銀行を通じて振替え決算をおこなわねばならず、いかなる支払い手形も市場で流通することは許されない。資本主義社会におこなわれている空取り引きというような手形による投機は、中国ではまったく存在しない。


戻る

inserted by FC2 system