なぜ小型工業をおこすのか


 中国政府は、工業建設のなかで、大型企業と中・小型企業を同時におこす方針をとっており、都市でも農村でも、中・小型工業が急速な発展をみせている。

 小型工業が国民経済全体のなかではたしている役割は、ひじょうに重要である。

 たとえば、一九七三年末までに千ちかくの小型窒素肥料工場が建設され、その生産高は、一九七三年における全国の合成アンモニア総生産高の五四パーセントを占めている。

 小型セメント工業もまだ、いちじるしい発展をとげ、一九七○年いらい、セメントの年間増産高は平均三○○余万トンである。全国の八○パーセントにたっする県がそれぞれ小型セメント工場をもち、その数は二八○○余にのぼる。これら小型セメント工場の生産高は、全国のセメント総生産高の半分以上を占めている。

 広大な農村に点在する五万余の小型水力発電所は、一九四九年当時の全国の発電能力を上回る発電能力をもっている。これらの小型水力発電所の建設によって、多くのへんぴな山間地帯や農村も、電気をもつ近代的な社会の仲間入りをした。

 プロレタリア文化大革命いらい、小型鉄鋼工業もいちじるしく発展した。一九七三年における全国の小型鉄鋼工場の銅、鉄の生産高は、一九六六年にくらべると、鋼が二倍余、鉄が三倍余の増加となっている。

 以上の事実は、小型企業と、国家が投資して建設した大・中型企業とが補いあって、中国における今日の社会主義工業の堅固な基礎を築いていることを示すものである。

 一九五七年の春、早くも毛主席は中国の経済建設について、「われわれは、おいおい一群の大規模で現代的な企業を建設して、これを中核にしていかなければならない。この中核がなければ、わが因を数十年のうちに現代的な工業をもつ強国に変えることはできない。だが多数の企業についてはそうすぺきではなく、中・小規模の企業をより多く建設するようにすべきである」と述べている。

 国家投資の大型、中型の現代的企業を建設するとともに、各級地方人民政府と人民公社に、自力で小型工業をおこす積極性を発揮させること――これこそ、中国が工業建設のなかで貫いている「二本足で歩く」という方針の重要な内容である。中国の経験は、この方針が中国の工業化の歩みを大いに促したことを証明じている。

 大型の現代的企業を建設するには、巨額の投資、資源の集中、近代的な交通の条件、かなり複雑な設備と技術を必要とし、建設にも長期を要するので、国家がひきうける以外に道ほない。だが、社会主義中国は発展途上国であり、旧中国から引きついだ経済的基礎はきわめて弱い。したがって、資金と設備にも限度があり、一定期間、重点的に限られた数の大型企業しか建設できないのである。

 大型企業にくらべて、小型企業は少ない投資と簡単な設備ですみ、建設期間も短い。それは、省、直轄市、地区、県、さらに人民公社、居住区にも容易に建設できる。これまで建設されたおびただじい小型企業についていえば、投資額は一般に数万元から数十万元、だいたい数ヵ月、多くとも一年で操業を開始している。

 小型企業は規模が小さく、設備が簡単である。では、製品の質はどうか?多くの小工場で、先進的な製品を生産している事実がそれに答えをあたえている。

 上海に近い小都市、常州市の、以前、ワイヤ編組を生産していたある小工場が、毎秒十二万回演算できる集積回路計算機の試作に成功した。また、上海にある、従業員わずか一七○人の町工場では、最近、毎分三○○個のナット(三〜四ミリ)を生産できる高性能四工程コールド・ヘッダーの製造に成功した。このように、多くの小型工場が今では、大工場の製品にくらべて質のおとらぬものを製造じているのだ。その決め手となっているのは人間であって、設備ではない。

 かつての小型企業の多くは、数年をへた今日、すでに中型の現代的企業に発展しており、なかには、かなりの規模をそなえた工業の生産基地になったものもある。このことは、小型企業は、おこされた当時は設備が簡単であっても、つねに努力すれば発展することができる、ということを説明している。事物はすべて小から大へ、低級から高級へと発展するもので、もとの水準にとどまっていることはありえないのである。

 小型工業の広範囲にわたる建設によって、中国の工業分布は合理的に改善された。以前、中国の工業は、沿海の大都市に集中していた。だが、今日ではすべての省、直轄市、自治区に、重工業、軽工業、基礎工業、加工エ業などかなりの工業がおこされて、ある程度、地元の必要とする工業を発展させ、農業を支援し、人民生活の需要をみたしている。小型の機械工場、化学肥料工場、セメント工場、鉄鋼工場、炭坑が全中国の半数以上の県に建設されている。条件の劣る残りの県にも、そのうちのいくつかの小企業が開発されている。チベット自治区には、二○○余の各種の工業がおこされた。

 各地に埋蔵される鉱物資源、農産物、副業製品は、小型企業の普及につれて、十分に活用され、地方の経済発展と人民の生活にきわめて重要な役割を果たしている。湖南省では、人民公社、生産大隊を動員じて、地元の石炭資源を十分に利用し、ごくわずかの投資で、多くの小型炭坑を開発した。それらの小型炭坑は、年間三○○万トン以上の石炭を産出するが、これは年産百万トンの現代的なたで坑の三つ分に相当し、地元農民の需要を満たしているだけでなく、国家の工業建設をも支援している。


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