自力で機械設備を製造する


 外国にたよらず、自力で機械を製造することが、中国国民経済の連やかな発展の重要なひとつの原因をなしている。

 二十五年らい、すでに、中国では、数多くの大型の中核的な企業と数万の中・小型の機械工場が建設された。そのほか、国民経済発展の必要に応じて、冶金・鉱山設備、発電設備、石油・化学工業設備、軽工業、紡績機械および自動車、トラクター、工作機械、計器、メーター、造船などの製造工業がそれぞれ設けられた。いま、中国の機械工業は、すでに相当の基礎をもっており、部門別にみても比較的ととのい、その分布もわりあいに合理的である。設備の技術水準もいちじるしく高まったので、国民経済発展のために必要とする各部門に、大量のプラントを提供することができるようになった。一九七一二年を一九六五年にくらべると、鉄鋼などの原材科工業を発展させるために提供した鉱山、冶金設備は、それぞれ四倍から四倍半ふえ、自動車、工作機械、石油設備、発電設備の生産は、それぞれ一・七倍から六倍余ふえた。

 旧中国には、機械製造工業というものはほとんどなく、一部の小型モーターや小型ポンプなど簡単な製品の生産、その修理・組立がやっとであった。しかも、その機械設備は、おもに輸入に依存していた。これは旧中国の植民地・半植民地的工業の特徴を示すものである。

 農業は国民経済の基礎である。農業の根本的な活路は機械化を実現することにある。一九五八年の大躍進いらい、とくにプロレタリア文化大革命いらい、農業機械製造業は大きな発展をとげた。現在、全国の二十余の省、直轄市、自治区には、いずれも、トラクター工場、動力機械工場が新設され、一部のへんぴな地区をのぞいて、大多数の県に農業機械修理・製造工場が設けられている。トラクター、ハンド・トラクター、排水・灌漑用動力機械、収穫・脱穀機、農業・副業生産物加工機械などの主な農業機械の一九七三年における生産高は、一九六五年にくらべて、数倍あるいは十数倍増加した。ここ数年、機械工業で働く労働者、技術者は、人民公社の貧農・下層中農と協力して、先進的で、各地の耕作と地理的条件にかなった耕作機械や排水・潅漑用機械を製造しているため、全国の機械耕作面積と動力による排水・灌漑面積は、さらに拡大された。

 機械工業部門は、全国の基礎工業をうちかためるために、鉄鋼工業の発展に必要な冶金・鉱山設備の製造に注意をはらっている。中国では、すでに自力で、さまざまな型の採掘、水洗い選別、焼結、運輸、冶金および圧延などの設備を設計・製造し、大・中型の鉄鉱、非鉄金属鉱と鉄銅コンピナートにプラントを提供することができるようになった。一九五七年から一九七三年にかけて、鞍山鋼鉄公司、武漢鋼鉄公司、包頭鋼鉄公司などの大型鉄鋼企業に、大量の圧延設備が提供され、鋼材の品種をふやすための条件がつくられた。現在、中国で生産される鋼の種類は千をこえ、鋼材の品種は二万余にたっしている。自動車、トラクター、重型機械、精密計測器、メーターなどの製造部門およぴ鉄道・交通、石油・化学工業などの部門で必要とする各種鋼材は、すべて自力で生産できる。

 旧中国では、一八七六年から一九四八年までの七十三年間に、わずか二十余の炭鉱が開発されただけであった。新中国成立ご、新しいプラントをもって旧い炭鉱を装備、改造したばかりでなく、多くの大・中型のたて坑を新設した。しかも、これらの炭坑建設に要するプラントは、ほとんど自力で製造したものである。

 中国では、一九五八年に、世界最初の一万二○○○キロワット二重内部水冷式蒸気タービン発電機の試作に成功したのち、一九六九年にまた、一二万五○○○キロワットニ重内部水冷式蒸気タービン発電機の製造に成功した。つづいて、二○万キロワット二重内部水冷式蒸気タービン発電機が送電をはじめた。電力工業の設備が充実するにつれて、発電量は年々増加している。現在、全国の数日間の発電量が一九四九年の一年間の発電量に相当する。いまは、沿海地区で電力工業が大きな発展をとげただけでなく、奥地にも、一群の新しい電力工業基地が建設されている。

 多く、はやく、りっぱに、むだなく機械工業を発展させて、国民経済のすみやかな発展の需要をできるかぎり早急に満たすために、各地の機械工業部門は大衆路線を堅持し、労働者と技術者の積極性を十分に発揮させ、技術革新を大いにおこなって、設備製造の過程でうまれた多くの困難を克服した。先進的な水準にたっする、鉱山、冶金、石油、化学工業などの多くの大型設備は、大型加工機械がまったくない状況のもとで製造されたものである。そのための重要な方法というのは、広はんな労働大衆に依拠することであった。「蟻が骨をかじる」という方法は、中国の機械工業における重要な、テクノロジーの創造である。その意義は、労働者の知恵を集中し、大型設備が皆無の条件のもとで、小型設備を用いて、大型機械を加工、製造することができることにある。

 大衆をたちあがらせて新しい設備を製造するいま一つの方法は企業の潜在力を最大限にほりおこすことである。機械工業部門は業種という限界をうち破って、仕事を分担し、協力しあい、各方面の積極的な要素をひき出し、力を集中して設備の製造にとりくんだ。江蘇省では以前、重型機械工場がなかったために、鉱山設備や冶金設備を生産することができなかった。しかし、南京製鋼所に完備した鉱山・冶金設備を提供するため、プロレタリア文化大革命のなかで、江蘇省は十余の部門と二○○余の企業との大協力を組織して、わずか三年で三万余トンの鉱山設備と冶金設備を製造し、一年で「六五○」中型圧延機の試作に成功した。

 中国では、技術者・労働者・幹部の三結合と設計部門・使用部門・製造部門の三結合という方法をとって、機械製品の設計をおこなっている。この方法によれぱ、各方面の正しい意見の集中、人材の特長の発揮、製品の設計面での改革が可能である。したがって、使用部門の要求にかなう製品の設計、製造部門における量産、原材料と労働力の節約、コストのひきさげ、製中の質の向上などに、大いに役だつ。数年らい、多くのおもな機械製品と先進的な水準をもつ一部の製品――たとえば大型高炉、転炉、大型ジグなかぐり盤、研削盤、数値制御工作機械、全許容偏差式単面噛みあい測定計、穴明けドリル、大口径ポンプなどの設計、製造にあたっては、すべて三結合という方法がかたく守られているのである。


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