鉱山の開発


 中国は、九六○万平方キロの土地、一万四○○○キロの海岸線を擁する。この広大な陸地と海域にはゆたかな鉱物資源が埋蔵されている。だが、第三世界の多くの国と同じように、この百年らい、中国の鉱物資源は、帝国主義、植民地主義の支配下におかれ、かれらの狂気のような略奪にさらされていた。

 解放前の旧中国は、いくつかの帝国主義国の争奪の的である脂ののった肉だった。一九世紀の中期から、帝国主義者は「援助」「旅行」「布教」などの名を借りて、たえず人を中国におくりこんで地下の資源をしらベ、それを思いのままにわがものにした。いくつかの帝国主義国は清朝政府にたいして一運の不平等条約締結を強要した。それらの不平等条約によって、中国の十余省の鉱山開発権はかれらにうばいとられたのである。帝国主義は、中国の安価な労働力を利用して、勝手に鉱山を開発し、鉱産物を略奪した。そして、それから生産した製品と原料を逆に中国に売りつけて、中国人民を徹底的に搾取したのである。

 新中国は成立ご、中国の鉱山開発権の独占を帝国主義に許した不平等条約のすべてを廃棄した。政府はまず鉱物資源を国有化し、独立自主をたてまえとして地下資源の探鉱、開発をすすめてきた。

 たとえば、地質探鉱を例にとると、解放前の中国には技術者二○○余名、労働者八○○余名を擁していたにすぎない。いまは、区域地質調査隊、鉱物全般調査隊、石油地質調査隊、水文地質調査隊、工程地質探査隊、地球物理探鉱隊など数百を数え、地質関係の技術者数万、労働者数十万を擁する。これらの数字は解放前の数百倍にあたる。

 この膨大な地質調査陣は、地上から地下、空中から海洋にいたるまでのさまざまな探鉱設備と計器をもっている。一九七三年度におこなわれたボーリングの延長は、旧中国の四十数年間の合計の数十倍にあたる。

 専門の地質探査隊のほかに、中国は、農村人民公社の社員をふくむ一般大衆による鉱山さがしにも注意をはらい、少数の専門家にだけたよる鉱山さがしという以前のやり方をあらためた。

 国家の地質調査隊は地元の人びとといっしょになって鉱山さがしをした結果、中国各地で万を数える鉱物資源の手がかりをつかみ、多くの新しい鉱物の産地、若干の新しいタイプの鉱床を発見し、百種をこえる鉱物の埋蔵量を明らかにした。炭鉱と大油田がつぎつぎと発見されたことにより、「中国には石油がとぼしい」、「長江以南には石炭がない」などという帝国主義者のたわ言は完全に否定された。鉄、マンガン、銅、タングステン、アルミニウム、ニッケル、鉛、亜鉛、硫黄、燐、石綿その他の重要な多くの鉱物の埋蔵量も、探査によってたえず増大している。それにひきかえて、旧中国が探じあてたのは一八種の鉱物にすぎず、推定した埋蔵量もごくわずかだった。

 中国南部の江西省で活躍する地質調査隊は、地元の九つの県の人びとから報告された手がかりをもとに、ある小さな盆地をえらんで岩塩のありかをさがした。かれらは、その地方に住む三○○○余の住民を訪ね、数十の井戸、泉、異なる地区の地属の変化を調査・分析して、ついに、長い年月にわたり岩塩がないといわれてきたこの省内に、全省民が数千年にわたって食するに足りる大きな岩塩の層をさがしあてた。

 解放前の中国には専門の地質学院はなく、いくつかの大学に地質学部(または科)があったにすぎない。一九五三年以降、湖北省、長春省、成都市、河北省などに地質学院、地質中等専門学校があい前後して新設されたほか、多くの総合的理工科大学に地質学部(または科)が設けられた。国家は、専門の大学、中等専門学校で多くの地質探査マンを養成するほか、野外での地質調査のさいに、年輩の労働者に実習生を配する方法をとり、ある程度の理論的基礎と実践面での経験をもつ技術者を多数養成した。いま、地質調査隊の技師長、技師など技術面での責任者の中には、実際に調査をしながら学んだ実習生出の者がすくなくない。

 地質調査の設計、技術部門は、外国のすすんだ技術と経験の吸収に注意してはいるが、それは従であって、探鉱設備、地質計器を自力で設計・製作して、さまざまな地質、鉱物資源を全面的に自力で調査することが主である。解放前の中国では、探鉱機械、地質計器を製造できなかった。新中国成立ご、大型、中型の探鉱機械、地質計器をつくる工場がいくつも新設されたほか、旧中国からひきついだ企業の改造をすすめ、旧中国がのこした私営の小さな鉄工場、鋳物工場、機械修理工場などを公私共営をへて国営にかえ、合併、拡張して、地質関係の機械設備を専門に製造する工場にしていった。いま、中央から地方、さらに地質調査隊にいたるまで、中央は大型、地方は中型、地質調査隊は小型と、それぞれ工場をもっており、それが全国的規模をもつ探鉱機械、地質計器の製造・修理網を形づくっている。

 国家の統一的な国民経済計画のもとに、大きな鉱山を開発するとともに、地方および大衆の積極性を十分に発揮させて「大型、中型、小型」の鉱山を同時に発展させる方法をとり、省クラス以下の地区、県や人民公社などでも探鉱、採鉱を実施させている。かれらが採掘したものは、主としてその地の農業の発展と目用必需品製造にふりむけ、その地で利用されるほか、国家にも売りわたされる。河南省にある地方経営の小さな炭鉱はこの省の石炭需要量の三分の一をまかなえる。この省の平陌人民公社は、この数年間に、十余万トンのボーキサイトを採掘し、それを国家に売りわたした。以上のように、中国では各地区、各部門、数億の大衆が力をあわせて鉱山開発につとめるという新しい局面が形づくられている。


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