2.暗黒な人食い鬼の巣くつ――寺院

 寺院は、奴隷主階級がその反動的支配をまもるための精神的支柱であった。農奴主階級は、宗教の神権を利用して勤労人民をあざむき、殺害した。寺院は、かってに「法規」や罰則を定め、監獄を設けて、広はんな農奴にたいし残酷な搾取をおこない、迫害をくわえた。多くの農奴が、ここで、手足をきりおとされ、目玉をくりぬかれ、鼻をそがれ、筋をぬかれ、生皮をはがれるなど、身の毛もよだつような酷刑に処せられた。

2.1 債務にせめられて

 暗雲がたちこめ、野獣の叫びがきこえる。生まれ落ちたその日から、寺院にたいする「子孫代々の債務」が、巨大な山のように、貧しい牧畜民の肩にのしかかっている。かれは、一生涯飢えをしのんで、寺院のために牛や羊を追い、水を運び、薪を切るなど、数えきれないほどの労役にこきつかわれる。そのあげく、馬の尾にしばりつけられて、ひきずり殺されるのだ。




腹黒い執事は手にじゅずをかけてはいるが、その凶悪な目つきを
おおいかくすことはできない。馬のくらにかけられたソロバンが、
血にぬられた大口をあけて、貧乏人の血と肉をのみこむ。
「畜生め! いつかかならず、おまえたちの血の債務をつぐなわせてやるぞ!」
血が流れ肉が裂けても、この頑強な牧畜民の全身にみなぎる
憎しみを責めほろぼすことはできない。



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