Ⅱ 中国の「文化大革命」の現段階

はたして「収拾」にはいったのか

　「激動を続けてきた中国の文化革命も、ようやく収拾段階にはいった」（67年12月31日、『読売新間』「68年への視角”収恰段階の文化革命”」から）

　「中国の文化大革命は咋年10月の国度節ごろを境に、奪権から収拾の段階にはいった」（67年1月4日『朝日新聞』、北京＝秋岡特派員「年を越した文化大革命」から)

　最近の商業新聞などでは、このように、中国の「文化大革命」が「収拾段階にはいった」という.判断をしきりに流しています。中国の「文化大革命」についての情報がきわめて少ないなかで、最近は67年正月から8、9月ごろまで、中国の各地でくりびろげられた”武闘” ”流血の惨事”などのニュースが少なくなりました。一方、国慶節（10月1日）前後から、「毛主席に限りなく忠実な党委員会をつくろう」（67年11月28日付中国人民解放軍機関紙『解放軍報』論文）という主張がではじめました。そして、紅衛兵や造反団などによって破壊され、機能喪失状態となった中国共産党組織をつくりなおそうという世論づくり、あるいはこれと前後して、謝富治公安相（北京市革命委員会主任）の、「68年党大会開催」説などが伝えられました。そういうところから、「収拾段階」にはいったという観測が、国際的にも流れだしていることは事実です。

　では、現在の中国の国内で起こっている事態はどのようなものなのか。

　ひとことでいえば、毛沢東一派による中国共産党の払物化、専制支配の確立をめざす「中国の文化大革命」によって生じてきた中国国内の基本的矛盾は、なんら「収拾」されていないだけでなく、ますます内攻し、激化の方向をたどっていると考えられます。こういう点からいえば、「収拾段階」というような見方は、きわめて皮相なものだということです。

　そのことは、中国から伝えられてくるニュースを中心に、最近の事態をみてみるだけでも明らかになります。

　第1点は、毛沢東一派が、67年1月いらいたえまなしに強調し、指導してきた「奪権闘争」や、紅衛兵、造反団組織の毛沢東思想による「大連合」および、こうした”革命組織”と”革命幹部”と”人民解放”の3者による「3結合」なるものの実体は、毛沢東一派によってにぎられている”人民解放軍” と宣伝機関（放送、新聞その他）を武器として、中国人民の上に、力ずくで「毛沢東の神恪化」というローラーをかけることによっておこなわれているということです。

　毛沢東一派の日本にたいする宣伝の受信機関である『中国通信』の報道のなかから、その内容をみてみましょう。

　「陜西省（註、まだ革命委員会準備小組がつくられていない）の革命的大連合協商会議が12月28日、正式に西安で成立した。これには中国人民解放軍陜西省左派支援委員会の貴任者黄経耀楊煥民（その他氏名は略) が出席し、黄経耀が同会議の正式成立を宣言した。西安区の大衆は最近、中国人民解放軍の大きな援助のもとに、話しあい相談し……同協商会議の成立となった。楊煥民は人民解放軍陜西省左派支援委員会、省軍区・省駐留部隊の全員を代表して祝賀のあいさつをした」（『中国通信』67年12月28日）

　「甘粛省（註、68年1月25日革命委員会が成立）の蘭州市で大連合、3結合による臨時権力機構―革命委員会が成立した。大会の席上、蘭州部隊責任者、甘粛省革命委員会準備小組副組長徐国珍が発言した。大会には蘭州部隊貴任者張達志（以下略）、甘粛省軍区責任者、省革命委準備小組副組長張忠らが参加した」（『中国通信』68年1月1日)

　「広東省（註、68年2月21日革命委員会が成立）の広州市にある702鉱山では、昨年8、9月には、大衆組織の2大組織の闘争は非常に激烈で、直接に同鉱に影響を及ぼした。人民解放軍広州部隊702鉱山駐とん某部の左派支援小組は、毛沢果思想の違大な赤旗を高く掲げ、同鉱を支援し、革命的大連合を実現した……現在、同鉱の革命情勢は非常にすばらしい」（『中国通信』68年1月3日）

　「吉林省（註、68年3月6日革命委員会が成立）の通化市多くの工場、学校では、大いに階級教育をおこない、かつての苦難を思い、現在の安楽に思いをいたす運勤をくりひろげ、大いに階級的自覚を高めている。多くの工場で相次いで革命的大連合を実現し、また紅衛兵もあとを追い、22の中学のうち15が革命的大連合を実現した」「吉林省人民解放軍某部指揮中隊毛沢東思想宣伝隊は、通化市ゴス工場の2派の革命的大衆の大連合を援助したのち、付近のいくつかの工場の革命的大連合を強くおし進めた。同宣伝隊の同志は点か.ら面へ、1点の赤から1面の赤へという方法をおし広め……」（『中国通信』68年1月5日）

　「湖南省（註、まだ革命委員会準備小組の段階）では、現在、全省の6専区・市に革命委員会凖備小組が成立し、多くの県・市で準備小組の設立凖備が進められている」（『中国通信』68年1月3日）

　以上は、1月上旬当時に『中国通信』が伝えた「大連合」の動きのおもなものです。

　最後の湖南省の例をみても明らかなことは、「革命委員会凖備小組」がつくられたという湖南省でも、まず毛沢東一派によって、上から人民解放軍の武力によって省内各地に「準備小組」がつくられているということです。ちなみに「準備小組」がつくられる以前は、人民解放軍による「軍事管制委員会」が権力を行使しています。つまり「革命委員会」なるものが組織される以前のその地域は、全面的な軍の支配下にあるということです。

　しかも、この時の報道では湖南省全省にある9専区、1自治区、7市のうち、「6つの専区・市」にしか「準備小組」がつくられず、のこりの「11の専区・自治区・市」は未成立であり、同省内のその他の83県、4自治区は、その「設立凖備中」だったというわけです。

　こうして、現在の中国では、陜西省や吉林省通化市などの報近でも明らかなように、人民解放軍の武力なしには、「大連合」も「3結合」も進まないという事態なのです。人民解放軍が「毛沢東の神格化」を唯一の武器にして、中国人民に専制支配確立のためのローラーをかけていることは、いまさら説明を必要としないでしょう。

　第2点は、では、こうしたローラーをかけてつくられている「大連合」もいまだ全国的には成功していないだけではなく、革命委員会がつくられた地域でも、成功していないという点です。

　12月30日北京発の日本経済新聞鮫島特派員の記事は、つぎのように伝えています。

　「12月30日、北京で配達された上海の『文雁報』29日付は、第2面に『なぐりつけ、うちこわし、なだれこみ、家宅捜索、さしおさえなどの行為を厳禁する」と題する囲み記事をかかげた。あらまし次のとおり。
　1．党中央委員会は、すでになんども、くりかえし『なぐりつけ、うちこわし、なだれこみ、家宅捜索、さしおさえ』を禁じることを通達してきたし、勝手に人を連捕したり、体罰などの行為を禁じている。あくまでも武闘には反対する。
　1．このところ、この種の”ゆがんだ風潮”がふたたび芽ばえているが、これは”極左”思想の現われであり、文化大革命が始まって以来1年半にもなる現在、プロレタリア革命派が権力を掌握したもとで、このような”形は左で実際は右”の風潮が現われるというのは絶対に容認できない。
　1．下心があって打ちこわしなどの行為を続ける悪質なものは、法律にもとづいて制裁すべきである。」

　すでに1年前に”奪権”し、革命委員会をつくり、その主任と副主任には、毛沢単直系の張春橋、姚文元を配置した上海市で、プロレタリア革命派が権力を握ったもとで」、こうした”風潮”があらわれているということは、毛沢束一派の「文化大革命」路線の必然的な産物なのです。上海でのこうした風潮が、今後とも全国各地の「革命委員会成立」の地域で発生しない保障はどこにもなく、”臨時権力機構”をつくる過程でも、あるいは表面を糊塗するために大急ぎで、「大連合」や「3結合」をすすめようとする過程でも起こりうるということは、過去1年間の武漢や広州その他の”武闘”の経験が立証しました。かりに人民解放軍の武力で、力ずくで「収拾」されたとしても、事態は「内攻」するだけです。

　同じ日の日本経済新間鮫島特派員の報道では、最近、上海や北京の新聞によると、また各地で、労働者の賃上げ、生活資金の貸し出しなどが起こり、「中共指導部はこれを”反革命の逆流”として、きびしく警告している」ということです。

　中国では「節約をして革命をやれ」ということが強調されています。「文化大革命」による混乱で、生産ストップ、サボタージュ、乱関その他によって、経済上も大きな混乱をもたらしたことは否定できません。その上、1年余も”造反”(（むほん）”奪権”の戦闘がつづき、輸送・生産が大きく乱れました。 65年秋から始まった第3次5ヵ年計画（目標数宇その他の具体的な内容が発表されていませんから、進行状況もわかりません）に、大きな影響が出たことも否定できないでしょう。これまで立案、計画、指導にあたってきた政府と全国の行政機関、党機関の機能がマヒしているのです。

　こうしたことから毛沢束一派が、最近、”革命幹部”を復職させない限り、生産がうまくいかないとみて、「３結合」のなかでの ″幹部”の役割を強調していることも事実です。

　しかし、こうしたなかで、また”反革命の逆流”としての「経済主義」が各地で発生しているというわけです。

　上海の『文匯報』によれば、「上海地区工場の中には”生活の因難を補助する”とか、”労働者、職員の生活福利の向上”などの名目をつけて借金する風習が広がり、工場で積み立てた”互助金”が、借金戦法のなかで、からっぽになった例もある」ということですし、北京の場合も、ほぽ同様な現象を呈し『北京日報』の社説のなかで「”これまでの不合理なすべての利度や規定に反対する”と称して、あれこれと金の支仏いを要求し、なかには賃金の改善と称して、勝手に昇給をとりきめるケースもある」と指摘し、なかには、武闘や生産ストップ、サボタージュを起こして、関係機関に昇給を迫るような事例もあるといっています。

　毛沢東一派によれば、こうした労働者の経済要求は、すべて修正主義のあらわれであり ”反革命の逆流”とされます。67年1月にも、上海、北京で同じ現象が発生し、「経済主義打倒」が大いに叫ばれました。しかし、社会主義国のなかで、労働者が倩金をしなければならなくなったということは毛沢東路線の失敗のあらわれでこそあれ、毛沢東思想の押しつけで解決できるものではありません。働くものが安心して生活できる社会環境こそが、社会主義が資本主義よりもすぐれていることを示す初歩的な指標にほかなりません。むしろ国際共産主義運動の団結を破壊する「反米反ソの国際統一戦線」論の破たんと、中国の社会主義建設の路線をめぐる毛沢東路線の夫敗を、毛沢東の神格化と専制支配の確立によってごまかそうとしたところに、今回の「文化大革命」の1つの大きな要因があったと考えられます。したがってまた、「経済主義」として攻撃される労働者大衆の要求と、毛沢東一派の最近の路線との矛盾は、今後いっそう内攻し、激化しないわけにはいかないとみられます。

　第3点は、こうして、不安定で、いっそう矛盾を内攻させなからつくられてきた「大連合」、「3結合」を基礎にしたという毛沢東一派の専制支配の道具である ”臨時権力機構”――「革命委員会」が、どのようにしてどの程度つくられているのかということです。

　この1年間、さらに66年8月の中国共産党第11回中央委員会全体会議（11中全会）から致えれば、1年7ヵ月という期間の混乱をへて、現在までに（68年12月20日現在）、全国の3直轄市、21省、5自治区のうち、革命委員会が正式に発足したのは、ことし3月6日成立した吉林省革命委員会を加えて3直轄市、11省、1自治区にすぎません。その革命委員会成立の経過をみると、今年になってから「朝夕を争う」と大変いそいで「革命委員会」の形をととのえることにやっきになったことであり、またきわめて明白なことは、人民の下からの”大連合”などというものではなく、人民解放軍の強引な力ずくの”権力機構”づくりだということです。これは「革命」どころか、「軍事クーデター」といってもよい性格のものです。

　67年夏、大流血、大武闘事件をくりかえし、中央文化革命小組から調停にいった王力、謝富治らが監禁されて飛行機や軍艦まで出動した武漢市と、この武漢を省都とする湖北省にたいしても、強力なテコ入れがおこなわれました。そして本年1月20日、「武漢市革命委員会」が成立し、 2月5日「湖北省革命委員会」ができました。

　武漢市革命委員会の主任は、人民解放軍武漢警備区司令の方銘です。湖北省革命委員会主任は武漢部隊責任者曽思玉がなっています。大鉄鋼コンビナートをもち、労働者の町である武漢市の最高権力を、軍が握らなければまとまらないというところに、今日の「革命委員会」づくりの矛盾の深刻さ、おもてむき「収拾」のかげにある「軍事クーデター」的性格が象徴されています。

　このように軍の幹部が革命委員会をつくらせ、その主任におさまっているのが、最近の中国の事態での1つの大きな特徴です。2月21日成立の広東省でも、主任は広州部隊,司令の黄永勝、その省都広東市の革命委員会主任は広東軍区司令の黄栄海です。また、3月6日成立の吉林省革命委員会も主任には、解放軍吉林軍区責任者王淮湘が就任しています。

　こうして毛沢東一派が昨年くれいらい、必死の革命委員会づくりを急ぎながら、全国の29の市・省・自治区のうち16の市・省・自治区にしか「臨時権力機構」がつくられておらず、のこりの9省四自治区では「上海につづけ」「武闘をやめて文闘でやれ」「労働者が2つの隊列に分けられるべきではない」などと、毛沢東自身の”教え”というローラーをかけつづけられながら、いまだに”人民解放軍”の軍制管理下におかれています。

　こうした事態にある中国の現在の「文化大革命」の状態を、安易に「毛沢東一派の勝利」とか、「収拾段階に突入した」などと断定できないことは、いうまでもありません。

　第4点は、では現在、毛沢東一派がこうした事態を、どのように”処理”しようとしているかという点です。

　68年1月1日付の、中国共産党機関紙『人民日報』、同理論誌『紅旗』_、人民解放軍機関紙『解放軍報』の3紙誌が、共同論文「プロレタリア文化大革命の全面的勝利を迎えよう」を発表しました。以下は、『中国通信』67年12月21日によるその要旨からの引用です。なおこの共同論文には、理論誌『紅旗』も名前もつらねていますが、雑誌『紅旗』そのものはこの4ヵ月間も発行されず、共同諭文それ自体は『紅旗』誌上では未発表という奇妙な現象を呈しています。これは『紅旗』編集部をめぐる毛沢東一派自部の対立が深刻化しているためです。

　ところで共同論文によれば、「文化大革命は1967年、すでに決定的な勝利をかちとった」と評価しています。そして、新年に「全面的な勝利をかちとる偉大な戦略目標を実現するために」、5つの”戦闘任務”をかかげています。

　第1は「毛沢東思想を活学活用する偉大な大衆運動」をくりひろげること、第2は「革命的大批判をひきつづき深くくりびろげ、革命的3結合を促進し、強固にし、各単位、各部門の闘争、批判、政革を」くりひろげること、第3は「党の組織を整頬し、党建設を強化すること」、第4は「解放軍を擁護し、人民を愛護すること」、第5は「革命に力を入れ、生産を促し、仕事を促し、戦争への備えを促すこと」となっています。

　1、2、4、5は、こと新しいものではなく、くりかえし強調されてきたことです。第5が、これまでは「革命に力を入れ、生産を促す」というスローガンであったものに、さらに仕事に精を入れ、戦争に備えようという強調がくわわっています。

　注目されるのは第3点で、冒頭でふれたように、67年11月ごろから強調されはじめた”党組織再建” が出ていることです。

　共同論文は「プロレタリア文化大革命は、党の整頓をおこなう偉大な運動である」とのべ、.劉少奇、鄧小平らの「修正主義の党建設の路線を徹底的に批判し」、毛沢東に忠実な党組織づくりをすすめる意図を示しました。

　論文はつぎのように書いています。

　「文化大革命のなかであらわれた優秀なプロレタリア階級の先進分子を吸収し、入党させ、裏切り者、特務（スパイ）、頑固に悔い改めない資本主義の道を歩む実権派を除名し、一掃しなければならない」

　こうして「現代の最も偉大なマルクス・レーニン主義者である毛主席を指導者とし、現代のマルクス・レーニン主義である毛沢東思想で武装した中国共産党をつくり上げようというわけです。

　いいかえれば、毛沢東一派によって進められている「文化大革命」の名による中国共産党の私物化をさらiにおしすすめ、毛沢京一派が「実権派」とよんで敵視している克幹部を除名して、毛沢束一派に ″忠誠” を誓う克員だけを残し、こんどの「革命」で毛沢東一派の手足となつた ″優秀な分子”を「入克」させることによって、あらたに「中国共産党」をつくりあげる――これを、ことしの大きな”戦闘任務”にしようというわけです。

　こうしたことによって、「中国共産党」と名のる組織がつくりあげられたとしても、それはもはやマルクス・レーニン主義にもとづいて中国革命を指導してきた中国共産党の再建を意味するものではけっしてなく、毛.沢東一派の専制支配確立の道具として、これに奉仕する私党的な組織でしかないことをしめすものです。そして、このような「中国共産党」の「再建」は、中国の「文化大革命」が、毛沢東一派の党私物化を体制化する、さらにもう一歩重大な反マルクス・レーニン主義的な段階にはいろうとしていることを意味しています。

　もとより、すでにみてきたように、武力と宣伝機関を足がかりに、毛沢東神格化のローラーを全中国人民の上にのしかけていくのですから、一時的、表面的に権力をカサにきて毛沢東一派が中国共産党組織と党員、人民の上に”君臨”することはできるかもしれません。そういう意味では、一時的なカッコつきの「事態の収拾」という状況が、つくり上げられることもありうるかもしれません。

　しかし、そうした状况は、わが党の論文「今日の毛沢束路線と国際共産主義運動」が指摘しているように、まったくマルクス・レーニン主義に反し、真の世界人民と中国人民の利益に反したものであり、その事態の内部にある基本的諸矛盾は、なんら正常に解決されるものではないことは明らかです。したがってまた、そうした事態は、なんら正しく”収拾”された事態とはいえず、矛盾を内包し、混乱を激化する要因をますます深める結果となるのです。こうした皮相な「収拾」は混乱の深化への土台にすぎません。

　さらに重要なことは、国際的にみるならば、まさに今日の毛沢東一派の路線は、「収拾」どころか、その「破産」が証明されてきていることです。

　ソ連共産党をアメリカ帝国主義と同列にみなし、ソ連共産党を組織的に排除した「反米反ソの国際統一戦線」なる場唱をしている毛沢東の路線が、国際共産主義運動と社会主義陣営の不団結につけこんでベトナム侵略の凶暴な拡大をすすめているアメリカ帝国主義をよろこばせているだけであることは、最近のジョンソンの年頭一般教書によってもあきらかです。それが反帝民主勢力の国際共同行動を分裂させるものだということはますます事実の進展によって証明され、国際的にもいっそう深く認識されるようになっています。毛沢東一派は、みずからの孤立化にあせって、自己の意見にしたがわないものを、すべて「修正主義」のレッテルをはり、「アメリカ帝国主義の共犯者」ときめつけ、ところかまわず「人民戦争」論などの極左冒険主義の路線をおしつけながら、「造反有理」（むほんは道理がある）などのスローガンでその転覆活動を公然とくりひろげましたが、こうした無政府主義、解党主義、反革命の路線は、各国人民からも支待を失うだけで、毛沢東路線のいっそうの孤立化をうながしています。外交路線にあらわれた大国排外主義、極左日和晃主義、分裂主義の路線も、この1年の経過で、ますますみずからの”威信”を失墜させてきました。

　ですから毛沢東一派がこの1年余、「毛沢東思想はマルクス・レーニン主義の最高峰」であるなどという途方もない毛沢東神格化を、国外におしつけようとしても、つぎつぎとその理論と実践の破産をきたし、逆に今日の毛沢東路線、毛沢東思想なるものが、マルクス・レーニン主義の原則上、ゆるすことのできない「左」からの修正主義であり、毛沢東一派は国際共産主義運動のかく乱者であることを、いっそう明確に証明してきました。今後、毛沢東一派が国内で「党の再建」という名で中国共産党の私物化を極点にまでおしすすめていこうとする事態は、かれらのこうした国際共産主義運動のかく乱活動を「収拾」するどころか、いっそう激化させ、けっきょくその矛盾と破産を極点にまておしすすめることとなるでしょう。

　こうレて最.近の毛沢東一派の動向が、ますますマルクス・レーニン主義の原則から遠くはなれ、孤立化のなかであせりを強めざるをえなくなっている現在、日本共産党と日本の民主勢力にたいする破壊と分裂の策動が、いっそう手を変え品を変えて、強められることも必至です。

　ただ、注意しなければならないことは、かれらの活動が、あまりにもでたらめて、日本人民の民主主義の意識から遊離し、大衆の支持を失うだけのやり方をとってきたため、戦術上の手直しをはかってくることがありうるという点です。たとえば、貿易の取り引きをする前に、日本の貿易商社員に「毛沢東語録」を朗読させたり、日本で中国の「紅衝兵」のものまねをくりひろげさせたりするやり方では、広範な日本人民大衆の物笑いのタネになるだけだということを感じはじめ、手直ししようとする兆候もあらわれています。

　ですから今後、かれらは、国内での表面上の小細工と同様に、日本における反革命的、反民主的策動をいっそう巧妙にやるという意味での、戦術的な、いろいろの手直しとか調整とかをおこなってくる可能性はあります。

　しかし、このことは、すでにみてきたように、かれらの基本的な態度の変化ということをなんら意味するものではありません。それはただ、わが党をはじめとするマルクス・レーニン主義を堅持する立場からのき然とした批判、内外情勢の発展によって、毛沢東一派の理論と実践の破たんが、いっそう進行し、それをとりつくろいながら、かれらの極左日和見主義、大国主義の路線をおしすすめていこうとしていることをしめすだけです。

　毛沢東一派が、自国の人民にたいして、「軍隊」と「宣伝機関」をつかい、毛沢東神格化のローラーをかけることは、当面一時的に可能なことがもしれません。しかし、こうしたローラーは、日本共産党と日本の民主勢力にたいしてかけることはできません。

　われわれにとっては、むしろ、こうした事態のなかでこそ、わが党の論文「今日の毛沢東路線と国際共産主義運動」に示された基本的態度を堅持し、びきつづいて革命的警戒心を高め、精力的に毛沢東一派の極左日和見主義、分裂主義にもとづく、大国主義的干渉とかく乱、これに呼応する反党対外盲従分子の活動を粉砕するために、いっそう奮闘することが、ことしの大きな課題となっているのです。

（紺野純一）

（「赤旗」1968年1月22日紺野論文に、その後の事実関係を若干加筆した）

もくじ Ⅰ：はじめに 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 Ⅱ：1～5