2. 「神さま」となった毛沢東


中国共産党中央機関紙誌には後光のさした毛沢東の写真がのるようになった 

 日本共産党と日本の民主勢力にたいして、まったく悪質な攻撃をおこなっている毛沢東一派は、いま中国で、「文化大革命」の名のもとに社会主義政権のかなめである共産党を破壊し、国家機構をこわして、毛沢東を中心とした専制支配をうちたてようとしています。この目的のためにいま中国では、毛沢東を神さまのようにあがめる状態が意識的につくりだされています。

 林彪は、毛沢東のことを、科学的な社会主義理論をはじめてつくりだし、発展させ、世界革命の指導者であったマルクス・エンゲルス・レーニンよりもはるかにすぐれているともちあげ、また、いまでは毛沢東にくらべられるものはだれもいないとまで賛美しています。毛沢東の名前のまえにはかならず「偉大な教師、偉大な指導者、偉大な統帥者、偉大な舵手」と毛沢東をたてまつる言葉が4つつけられ、文章や演説のおわりには、かならず「偉大な毛沢東主席万歳、万歳、万万歳」と万歳が3回もかさねられています。中国の『人民日報』や『北京放送』などでは、これ以上の賛美の言葉はないと思われるほど大がかりな、毛沢東を崇拝する報道が毎日ひっきりなしにおこなわれ、いまでは毛沢東は「永遠にしずまない太陽」となって、後光のさした毛沢東の肖像画がのせられています。(上の写真の紙面は『人民日報』第1面です)

 そのうえ、「毛沢東主席の言葉は、ひとことひとことがすべて真理である……したがって毛主席の指示は理解していても、理解していなくても実行しなければならない」 (林彪) といわれ、毛沢東の1言1言が「神聖にしておかすべからざる」ものとして絶対化されています。

 この主旨にしたがって、毛沢東の1句1句をあつめた「毛沢東語録」が林彪によってつくられましたが、この 「語録」は毛沢東を神さまあつかいにしている今日の状態を典型的にしめしています。この「語録」は、だれもがいつでも持っていなければならないものとされ、スポーツをはじめるときでも、商取引や演劇、食事のさいにも、かならずこの「語録」をまず朗読しなければなりません。67年8月3、4日、北京空港で日本共産党の代表に集団暴行をくわえたときでさえ、「語録」を朗読してからなぐったのですから、まったくあきれてものがいえません。

 このように毛沢東の片言隻句を、あたかも新興宗教の教祖のお筆先のようにあがめたてまつるこのやり方は、まさに科学的社会主義とは縁もゆかりもないものであるだけでなく、人民大衆こそ歴史の主人公であるという史的唯物論の原則を無視したものです。

 中国ではいま、仕事がうまくいくと「毛沢東思想」のおかげとされ、スポーツの新記緑がでても、品物がうまくうれても、すべてそれは「毛沢東思想」のおかげだとされています。そして毛沢東一派にたいしては、反対することはもらろん、一切の批判さえ禁止し、「毛沢東主席とその親密な戦友林彪同志を攻撃、中傷するものは、すべてみな現行の反革命行為であり、法によって処罰される」といって、毛沢東の神格化に賛成しないものには、あらゆる暴行と迫害がくわえられています。

 その反面、すベての共産党員がまもらなければならない党の規律については、それにしたがうのは「奴隷主義」だと攻撃され、共産党よりもなによりも毛沢東個人のいうことさえきけばよいということになっています。

 このように毛沢東の神格化をあおりたて、それへの絶対服従を最高の基準とする「文化大革命」が、どうしてふるい思想を改造し、新しい社会主義の文化や思想をうちたてるものとなることができるでしょうか。それは逆に封建的な蛮行を復活させています。かつて中国共産党は個人崇拝は階級社会の「くされはてた遺物」であるとするどく批判し、「いかなる個人であっても、その活動において、欠陥も誤りもないということはありえない」、だから「個人を党の集団のうえにおくことはゆるされない」ときびしく個人の神格化をいましめていました。このように、かつて毛沢東もふくめて共産党全体の決定としていましめてきたことを、いま公然とふみにじって毛沢東の神さまあつかいをすすめているのです。もちろん、革命をおこない、はたらく人びとの平和であかるい社会を建設し、社会主義、共産主義を実現するという大仕事をおこなうためには、どうしてもりっぱな人民の指導者が必要です。そしてこのような革命の指導者にたいして、その国の人民が愛情と尊敬の気持ちをもつことは当然のことであり、美しく正しいことです。

 しかしこのことは、今日おこなわれている毛沢東神格化とはまったくちがうものです。毛沢東神格化は、神仏や君主を崇拝するような収隷社会、封建社会のくされはてた遺物です。いかなる個人にたいしてもそれを絶対化し神格化するならば、進歩は転じて後退となり、反動的なものにさえなってしまいます。


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