4.民主的大衆組織の「分裂」の真相


五、「いま、日中友好協会をはじめ、日本アジア・アフリカ連帯委員会、日本ジャーナリースト会議、日中貿易促進会など多くの組織で分裂が起っている。……これらの分裂は、すべて、これらの組織のなかに、反中国の逆流がはじまったこと、日中両国人民の団結に反対する逆流がはじまったことを根本原因としている。……この逆流をつくりだしている張本人は、ほかでもなく日本共産党中央に巣食う修正主義集団である。……この異物をつまみ出すことによって運動は発展し組織は発展する……。われわれは、あらゆる戦線で修正主義分子とだんことして聞い、かれらと決別することを支持する」(『長周新聞』六六年十一月九日付社説)。

 「長周新聞」一派は、ここで一連の民主団体や国際友好団体の「分裂」なるものをしきりに強調し、この「分裂」を、これらの団体から「反中国の逆流」が「つまみだされ」た週程としてえがきだしています。だが、これもまた、事実をでたらめにねじまげたものです。事実の経過をみれぱきわめて明白なように、実際におこったことは、「分裂」でもなけれぱ、「反中国の逆流」が追放されたことでもなく、あれこれの大衆団体に対外官従路線をおしつけようとして失敗したひとにぎりの事大主義分子がこれらの団体から脱落・脱走していっただけのことです。

 (1)まず、日中友好協会の場合をみてみましょう。

 すでにのべたように、六六年の四月、五月ごろから国際交流運動のなかに、一部の外部勢力による大国主義的干渉の傾向、および、これに迎合する一部の事大主義的傾向がつよまり、国際友好運動の正しい発展にとって、重大な困難が生まれました。そして、こうしたなかで、日中友好運動のなかで自主・平等・相互の内部問題への不干渉の原則にもとづく目際友好運動の正しい基準をあらためて明確にし、これに反する内外の誤った態度を克服することが、きわめてさしせまった課題となってきました。

 こうして、日中友好協会のなかで、「協会の基本的性格と相互交流の基準」を明文化する問題が提起されたのです。ところが、これにたいし、協会の一部の常任理事たちは、基準の問題を討議すること自体が「反中国」だなどと、まったく、自主性のない主張をもちだして討議に反対し、「第二回日中青年大交流」に無柔件で参加することを主張しました。こうした主張が、国際友好の基準から逸脱した一部の外部勢力の大国主義向態度を無批判に肯定するる立場、したがって国際友好運動を相手国への盲従運動にかえる立場となることは明白です。

 しかも、これらの一部の事大主義分子は、対外盲従の路線を日中友好協会におしつけようとしたかれらの主張が受けいれられないとみると、新たな策動に訴えました。すなわち、かれらは、自主的自覚的に日中友好運動の統一を守ろうとする人びとをひぼうすることを目的とした日中国交回復についての "三十二氏のよびかけ "なるものをつくりあげ、これを道具にして、日中友好運動を分裂させようとくわだてたのです。

 このよびかけには、「われわれの運動の内部には、最近、さまざまな口実をもうけ、友好・交流の発展を極力妨げようとする傾向が生れている」という一節がありますが、首謀者の一人安井正幸がみずから告白しているように、「妨害者とは日本共産党をさすものであり、この節を除いてはこのよびかけの意味がなくなる」という性格のものだったのです。 "よびかけ "は、ただちに特定国の通信や日本向け放送などで大々的に宣伝されるとともに、このよびかけをもとにした日中両国の友好協会の「共同声明」なるものがつくられ、「共同声明」は日中友好協会のどの正式機関でも討議決定されていないにもかかわらず、これが協会内部に持ち込まれて、賛成しないものは「非友好」「反中国」であるとひぼう、中傷がおこなわれました。

 こうして、日中友好協会をまるごと、相手国への盲従運動の組織にかえる策動が、三十二氏の "よびかけ "と「共同声明」を武器としてすすめられました。しかし、このような策動にたいする抗議と追及の動きは次第に強まり、六六年十月二十五日にひらかれた日中友好協会第十三回常任理事会では、一挙に「共同声明」の「強行採決」を策した一部事大主義分子が、「日中友好協会十六年の団結と統一の伝統にもとづき採決強行をやめよ」などの正しい声に押され、「声明を支持しない人たちとはともにやることはできない。声明を支持する人はともに退場しよう」(宮崎世民=前埋事長)と捨てぜりふを残して、審議なかばに退場し、みずからの陰謀の失敗を暴露したのでした。

 しかも、翌十月二十六日にひらかれた日中友好協会第四回合国理事会には、これらの事大主義者は審議を放棄してはじめから姿もみせず、全国理事会出席の四十一都道府県連代表が全員一致の要請により出席を求めたのにたいし、「共同声明を無条件に支持しないかぎり絶対に出席できない」などと答えることしができませんでした。

 これが、日中友好協会の「分裂」といわれるものの真相です。

 (2)日本アジア・アフリカ連帯委員会の場合も、事態はこれと基本的に同様です。

 坂本徳松氏を団長とする日本アジア・アフリカ連帯委員会の訪中代表団が出発する前の第四回全国理事会(六六年九月二十四日、二十五日)では、多数の人びとから「今日の情勢のもとでは、日本AA連帯委の団結を守る立場からも、共固声明は出すべきでない」という意見が出され、代表団はこの意見を尊重し行動するという決定がなされていました。前にのべた日中友好協会の状況一つをみても、これはきわめて当然の措置でした。ところが、坂本氏らは、八名の代表団員のうち、この立場を堅持する三名を除外して、日中友好協会の場合と同様、事実上日本共産党を非難中傷する目的の内容をもった「日中共同声明」なるものを強引につくり上げました。

 代表団帰国後の十一月三日にひらかれた日本アジア・アフリカ連帯委員会第十二回常任理事会では、この「共同声明」が活発な質疑の的になり、多くの常任理事から「出発前の理事会の申し合わせに反しているが、この点をどう考えたのか」「声明のなかに日中交流をさまたげるものとしてアメリカ帝国主義、佐藤政府、現代修正主義とそのさまざまの新旧追随者とあるが、新旧追随者とはなにをさすのか」「地方でこのような共同声明をおしつければ運動ができなくなる」などの質問が提出されました。また、討議のなかでも、「日本AA連帯委は、あくまでも敵とたたかう方向で一致点で団結し、行動するという歴史的な伝統をうけついで、たとえ共同声明にどのような意見のちがいがあっても分裂してはならない」との訴えもなされました。しかし、坂本氏らは、これまた議事なかばにして、「共同声明が支持されなければいっしょにやれない」とのべると、その同調者を含めて八名だけがいっせいに退場し、かねて用意していた新しい事務所で分裂組織の旗上げをしたのです。

 日本アジア・アフリカ連帯委員会のいわゆる「分裂」も、外部勢力の大国主義的干渉に迎合し追随する一部分子が、AA連帯連動破壊の策謀に失敗し、みずから脱走したものにすぎません。

 (3)日本ジャーナリスト会議の場合は、どうでしょうか。

 ここでも、議長であった小林雄一が、ジャーナリストの自主的組織である日本ジャーナリスト会議の「真実の報道を通じて世界の平和を守る」「言論、出版の自由を守る」などの目的に反して、三十二氏の "よびかけ "とそこに示された特定の外部勢力の政治的見解に盲従する特殊な立場を一方的にこの団体に押しつけようとして失敗し、みずから脱走したものです。

 すなわち、日本ジャーナリスト会議は六六年十月二十七日、第二回評議員会をひらきましたが、席上、小林は「第二回日中青年大交流」ヘの代表団派遣問題にからめて、三十二氏のよびかけの全面的支持を求めました。しかしこれをめぐって、さまざまの見解があることがわかると、小林と他の二人の評議員だけが、討論が終わらないうちに、「三十二氏のよびかけを日本ジャーナリスト会議が支持せず、支持している会員をアジア・アフリカ・ジャーナリスト協会日本協議会訪中代表団の秘書長にしないのは、口で日中友好をとなえながら、行動ではそれを妨害する勢力のしわざであって、そういう人とはいっしょにやっていけない」とのべ、文字どおりにひとにぎりの連中だけで、かねて用意していた事務所を拠点に、分裂組織の旗上げをしたのです。これも、特定の国の通信などで、 "りっぱな行動 "としてほめそやされました。

 日中貿易推進会の場合については、すでに (3)でのべたとおりで、その手口はいっそう露骨なものだったのです。

 以上、かさねてかんたんに引いたすべての事例が物語るように、「長周新聞」一派が「逆流」とののしっているものこそ、日本人民の国際友好・貿易促進などの運動を正しい基礎と伝統の上に自主的に発展させようと誠実に努力している人びとにほかなりません。そして、かれらのいう「分製」なるものの実体は、ごく少数の対外盲従分子が日本人民の自主的な運動の発展に反対して、みずからそれぞれの組織から脱落していったにすぎないのです。そして、かれらは外部から、日本共産党や民主的諸運動、団体にたいして、一つおぼえのように「非友好」というレッテルをはりつけながら、米日反動勢力を有利にする破壊・分裂策動に血道をあげているのです。

 分製によって「運動は発展し、組織は発展する」などとかれらがいっているのは、事実とかけはなれた盲想であり、かれらの分裂主義の危険な正体をいっそう浮きだたせているにすぎません。

 これらひとにぎりの分子の破壊・分裂策動にたいし、いずれの場合も、特定の外国の人びとが直接あるいは通信社をつうじて称賛のことばをおくり、破壊・分製策動に反対する民主諸団体とは即刻手を切るという行為にでていますが、これは正常な国際的友好・交流の基礎を乱暴にじゅうりんする由々しい事態として重視しなければなりません。

 われわれはここで、はっきりいっておきます。自主独立の立場を堅持する日本共産党と、わが国の民主的諸運動、団体の自主的発展をもとめるすべての人は、たとえ対外盲従分子が自国人民のなかに根をもたないひとにぎりの集団であろうとも、いささかもかれらの分裂・破壊策動を軽視せず、それを断固しりぞけ、わが国の民主運動の統一と団結をまもりぬくであろうと。


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